新型コロナウイルスの感染爆発が止まらない。解決策の決め手の一つはワクチンであるが、またも日本は接種スピードが先進国最下位。1月27日時点で追加接種を終えたのは約342万人であり、1月中に接種可能な対象者1469万人の約23%しか接種できていない。全人口の2.7%。先進国でダントツ最下位だ。
図1 世界のコロナワクチン追加接種の進捗状況(2月4日現在) 日本は4.8%で先進国ダントツ最下位
「日経新聞 チャートで見るコロナワクチン」より
菅政権の時も最下位だった。この時は初めての使用であり、使用許可を出すための安全性の確認に時間を要したこと、加えて輸入による薬の確保が困難だったのが主な理由だ。しかし、今回は1500万人分以上の在庫があったと厚労大臣が答弁している。岸田政権は、12月17日に医療従事者や高齢者施設の入所者らに対し接種間隔の6カ月への短縮を決めたが、一般の高齢者に対しての判断は1月13日だった。今回の最下位は正に岸田政権の判断ミスによるものと言わざるを得ない。これまでの経験から2週間後の様子を予測して対策する必要があるが、岸田政権はこの教訓を生かしておらず、感染者が急増してから慌てて動いている。相変わらず後手後手だ。結果、死亡者数が増加してしまっており、一刻も早く高齢者への接種を終えて欲しい。もちろん、ワクチン接種ができない方や望まない方への差別がないように配慮が必要である。
【検査も世界最低レベル】 私はこの2年間、一貫してPCR検査の重要性を訴えているが、未だに自民党政権は検査を軽視していると言わざるを得ない。検査件数も先進国最低レベルが続いている。ここにきて、検査キット不足で検査したくてもできない状態だ。欧米では昨年12月下旬から感染が急拡大しており、日本でもこのような事態になることは予想できたはずだ。岸田総理は1月18日にメーカーに対して増産の要請をしたが、遅すぎたのではないか。聞くところによると、各メーカーはもっと早く要請がくれば対応できたと言っているらしい。
濃厚接触者の待機期間が大幅に短縮された。例えば子どもが感染し自宅療養になった場合、同居の家族は濃厚接触者になる可能性が高い。今までは感染者が10日間の隔離、濃厚接触者はそこから更に10日間の待機が必要で、トータル20日間の待機が求められることがあった。感染爆発による自宅療養者の急増で、濃厚接触者が急増しており、このままでは経済活動に大きな支障が出ると懸念されている。今回の改正で、同居の家族はマスクなどすれば発症から7日間で待機が解除されることになった。しかし、オミクロン株は感染力が強く、本当にこれで大丈夫なのか?どのような科学的根拠によってこの判断が下されたのか知りたい。発症から10日目にPCR検査をして陰性であれば濃厚接触者も解除でよいと思う。なぜ検査を推奨しないのか岸田政権の考え方が理解できない。
図2 世界のコロナ検査数の状況(2月4日現在) 日本は先進国最低レベルの検査数しか行っていない
「Coronavirus (COVID-19) Testing – Our World in Data」より
【感染状態が落ち着いた時にきちんと準備すべきだった】 感染状況はまだピークアウトが見られていない。2月5日の死者数は117人であった。8月の第5波では89人が最多であったので、3日連続でこれを超したことになる。今後が懸念される。
図3 日本とアメリカのコロナ感染者数の推移
アメリカの感染者数は1/10で表示 「NHK特別サイト 新型コロナウイルス」より
南アフリカの感染ピークは昨年12月12日、欧米では12月後半から感染爆発の兆しが見られた。日本では11月30日に空港検疫で最初のオミクロン株が検出され、12月24日に市中感染が報告された。ワクチンや検査キットの対応は12月中にできたはずだ。実際、12月の臨時国会で野党が指摘していたが、岸田政権は対応してこなかった。
この間、自民党は国会を軽視し続けている。昨年6月にオリンピックでの感染爆発を懸念して野党が国会延長を求めたが、自民党はこれに応じなかった。7月16日にコロナ対応のために臨時国会を開くよう、憲法53条に基づいた要請を行ったが、これにも応じず、10月の総選挙のための解散まで国会は開かれなかった。結果として自民党は選挙で勝ったが、それで本当によかったのか。国民のことを第一に考えた政治を取り戻したい。
【在日米軍の陽性者に対してゲノム解析を】 沖縄や山口、広島では在日米軍から感染が広まった可能性が指摘されている。米国でオミクロン株が猛威を奮っていたが、米軍関係者はPCR検査なしで日本に入国していたことがわかっている(米国に帰るときは検査していた)。日米地位協定により、米軍には日本の検疫法が適用されないのだ。岸田政権はもっと強く米軍に検査を要請すべきだった。
米側は感染者のゲノム解析を行っているはずだが、その結果は1カ月経っても日本に示されない。サンプルの提供を要請して、国内で日本独自に解析すべきである。ゲノム解析すると、その変異のパターンから、今国内で猛威を奮っているオミクロン株が米軍由来であるかどうか判断できる可能性がある。東京医科歯科大学のグループがコロナ入院患者のゲノム解析を行ったところ、南アフリカやヨーロッパで広がっているものではなく、北米型のオミクロン株であったと報道されている。岸田政権は積極的にゲノム解析を行うべきだが、先日の総理の国会答弁からはその姿勢が見られなかった。科学をベースにした解析によって真実を明らかにし、次の対策を取ることが強く求められる。