検査方法の違いと測定感度

衆議院議員 宮川 伸


 鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査、唾液を用いた検査、抗原定量検査など、色々な新しい検査方法が出ている。その測定感度についての質問が多いため、2020年8月17日時点での状況を説明する。また、詳細は厚生労働省の発表、例えば(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00132.html)などを参考にして頂きたい。

 検査方法に関する厚労省のまとめを資料1に示す。7月17日から無症状者の唾液検査も認められた。

 これらの判断が下された元になる実験結果を資料2~4に示す。資料2では、症状のある患者サンプルを用いて鼻咽頭ぬぐい液と唾液の比較をしている。発症から9日以内であれば唾液の使用が可能としている。発症から10日以上で結果に違いが出てくるのは、治ってくるとウイルス量が少なくなることが考えられる。使用キットによって一致率が異なるので、注意が必要である。

 資料3は無症状者に対する検査結果。(―)は検出できず陰性と判断されたもの。鼻咽頭PCRと唾液PCRで結果が異なるが、これらはウイルス量の少ないサンプルである。鼻咽頭と唾液でウイルスの分布状態が異なるため、ウイルス量が少ないと結果に違いが出てくるのであろう。

 唾液抗原定量検査は0.6pg/mLを検出限界としたが、PCRと比べて陽性と判断された数が少ない。鼻咽頭PCR検査で陽性と判断された37例に対して、唾液抗原定量検査は28例であり、一致率は76%である。例えば1000人の検査を行うと、唾液抗原定量検査では200人以上が見落とされることになる。この点を朝日新聞が8月21日の記事で指摘した。

 以前「みやかわ伸ホームページ」で説明した通り、成田空港では主に唾液抗原定量検査が行われている。多くの入国者がいるなかで、早く大量に検査するためだ。1台の装置で100検体を1時間で測定できる。検疫所所長の説明では、検出限界に近いサンプルは再度PCR検査をするなど、注意して検査しているとのことであった。また、資料3で0.6未満になっているサンプルはPCRもサイクル数が多いサンプルである。どのくらいのウイルス量で感染するのか?時間をかけて低ウイルス量まで測定する必要があるか?ある程度以上のウイルス量だけを検査して、検査数を増やす方がよいか?専門家の意見が聞きたい。

 成田空港で使っている抗原定量検査装置ルミパルスの性能を資料4に示した。PCR法で陽性となったがルミパルスで確認できなかった検体は2例あった。一方で、ルミパルスで陽性となったがPCR法で陰性となった検体は8例あった。すべて発症から9日以上たっている回復期の患者サンプルであった。


 これより、回復期の患者の場合、検出対象がRNAとタンパク質で結果が異なることがわかる。

 以上より、それぞれの方法に特徴があるので、結果の解釈には注意が必要である。特に回復期の患者サンプルやウイルス量が少ない場合は、測定法によって結果が異なる可能性がある。それらのリスクを理解して、検査を進める必要がある。