6月19日の衆議院経済産業委員会での質問が、24日の中国新聞に掲載されました。(以下本文)
上関原発議論 政府逃げ腰
中国電力が山口県上関町で計画する上関原発の是非の議論に、政府が逃げ腰になっている。中電が建設予定地の海の埋め立て免許延長を申請した後、夏の参院選を控え、政府は原発への根強い反対世論を意識して慎重な発言を繰り返す。与野党とも内部で原発へのスタンスが統一できない事情もあり、参院選でも新増設の議論は低調になりそうだ。(河野揚)
参院選控え世論を意識 野党も足並みそろわず
19日に国会であった衆院経済産業委員会。「上関は計画の具体化が確実な電源だ」との考えを示す世耕弘成経済産業相に対し、立憲民主党の宮川伸氏(比例南関東)が疑問を投げ掛けた。「政府は原発を新設しないと言っているのに、なぜ具体化が確実なのか」
さらに宮川氏は畳み掛けた。「国から地元自治体に交付金が出ている。原発を造らないのに、お金を流していいのか」。世耕氏は「中電の計画や地元の状況に変化がない。交付を打ち切る理由がない」と繰り返し、宮川氏は「その説明では国民は理解できない」と言い返した。
中電と一線画す
その1週間前の12日。原子力規制委員会の定例記者会見で、旧規制基準で提出されたままの上関の審査申請をどう取り扱うか質問が出た。更田豊志委員長は「経産省が何も言っていない状態。ここで私の見解を言うのは勇み足と思う」と明言を避けた。
一方で、世耕氏は「上関の新設を認めるかどうかは規制委が判断すること」とも発言する。両社が上関の取り扱いの判断を押し付け合う形になっている。
中電は10日、埋め立て免許の延長を山口県に申請した。上関は国内唯一の新設計画地であり、中電は「国にとっても非常に重要な地点だ」と建設に意欲を見せる。だが、政府は「現時点で原発の新増設は想定していない」と繰り返し、中電の姿勢とは一線を画す。
16日、上関の建設に反対する集会が都内で開かれた。首都圏住民たち約130人に、河合弘之弁護士が「はるかかなたの原発を思って、これだけの人が都心に集まるなんて素晴らしい」と講演。その後、参加者は「いらんじゃろう、上関原発」と叫びながら、都内を練り歩いた。
「無責任の極み」
反原発の世論が根強い中、参院選の公約で自民党は新増設の是非に触れていない。電力安定推進議員連盟の細田博之会長(島根1区)たち原発推進派は新増設のを政府に働き掛けるが、政府与党は再稼働を優先する構えだ。野党も電力総連に支援される議員と反原発の議員がおり、各党のスタンスは完全には一致しない。
山口県の市民団体は7日、上関原発に関する質問書を経産省と原子力規制庁の職員に国会で提出した。政府方針の疑問点を問うた小畑太作事務局長は会合後、首をかしげた。「ずっと事業者に責任を転嫁したような回答に終始していた。無責任の極みだ」
上関原発 中国電力が山口県上関町長島にいずれも出力137万3千キロワットの2基を建てる計画。2011年3月、福島第1原発事故を受けて建設準備工事を中断した。昨年7月に閣議決定されたエネルギー基本計画で、原発新増設の必要性が盛り込まれず、工事を再開できないままになっている。
中国新聞「上関原発議論 政府逃げ腰」(2019年6月24日)