国会で種苗法改正の議論が本格化しています。農水省の説明はわかり難く、ほとんどの農家さんは正確な情報をお持ちでない状態です。農家さんの権利が抑制される内容なのに、このまま成立させてしまってよいのでしょうか?
 農水省は「シャインマスカットのような日本ブランドの海外流出が止まらないので、農家が登録品種を自家増殖する場合に、育成権者から許諾が必要になるようにする」と説明しています。
 これは一見もっともらしいですが、実は海外流出と自家増殖の制限とは直接関係がないのです。現行法でも、農家が自家増殖したものを他人に譲り渡すことは違法です。しかし、多くの種苗は「登録品種」と明記されておらず、農家はどれを他人に渡すと罰則が科されるのかわかりません。「農家の固有の権利」を奪う前に、まずはしっかりと説明すべきではないでしょうか。そうすれば、特許のかかった商品を安易に他人に渡すことはないと、私は農家の皆さんを信じます。

農水省の説明は「でたらめ」です!
海外流出を止めるためになんで農家の自家増殖の権利を抑制する必要があるの?

■ 今でも法律違反
 登録されている作物を、発明者の許可なく、農家が自家増殖して他人に渡すことは、今でも違法です。しかし、表示がきちんとされておらず、どれが登録されている種苗かわかり難いのが現状です。

■ まずは説明を
 農家さんにどれが登録品種なのか丁寧に説明すれば、安易に他人に渡すことはなくなると思います。
 発明者が誰が使っているか管理したいのならば、自家増殖を制限しなくても、名前だけ登録する制度にすれば用は足ります。
 農水省はそれでは緩すぎで、きっと農家は法律を守らないから、もっと厳しくすべきと言っているのです。

■ 海外流出は農家のせいなの?
 明確な証拠はないと農水省自身が言っています。
・シャインマスカット
 中国関係者が訪日した際に種苗を入手して中国に持ち込んだ可能性が高いです。日本の農家が中国関係者に渡したのかどうかは不明です。
・章姫、レッドパール
 静岡の個人育成農家が、韓国の一部の生産者に契約によって正規に渡しました。これが韓国に広く流出してしまいました。

■ 故意の流出は止められない
 誰かが故意に種苗を外国人に売ることは、農家の自家増殖に制限をかけても止まりません。違法と知りながら、承諾を得ずに隠れて増殖するからです。

■ 将来価格が上がる? 
 農水省は法律改正しても価格は大きく変わらないと言っていますが本当でしょうか?
 価格が上がらない理由として、農研機構や都道府県は農家のことを考えているから、と説明しています。では、外資系民間企業が入ってきたらどうなるのでしょうか?
 政府は農業の自由化を強力に推し進めています。種子法が廃止され農業競争力強化支援法が導入されました。この結果、外資系民間企業が参入しやすくなりました。将来、そういった企業が独占的な販売をしないと誰が言えるのでしょうか?農水省の言っていることは、やっていることと違うのです。

2020年11月25日号「#種苗法改正案に抗議します」