保育の質は大丈夫?

 消費税増税は「生活の安心」「誰も取り残されない社会」を作るために行うのではなかったでしょうか?それがいつの間にか、選挙対策の道具となり、高所得者優遇政策に変わってしまいました。消費税は逆累進性の強い税制ですが、使い方まで逆になってしまいました。立憲民主党は、幼児教育は無償化すべきと考えていますが、このやり方は間違っていると思います。
 このまま保育園・幼稚園の無償化を進めると、待機児童が増加し、保育の質が低下することが懸念されます。高所得者向けの無償化対策を行う前に、待機児童対策と保育士さん・幼稚園の先生の待遇改善にお金を使うべきではないでしょうか?

■保育園に係る所得階層毎の公費負担額
 今回の幼児教育無償化で税金がどの世帯に回るかを示す表です。税金の80%以上は年間の所得が約640万円以上の世帯に当てられます。生活保護世帯に回るお金はゼロ円です。この表を早く出すように以前から要求していましたが、やっと今年になって公表されました。(内閣府資料より)

■所得階層別の一人当たりの公費負担額
 幼児教育の無償化により、一人当たり得られる金額を示した図です。生活保護世帯はゼロ円ですが、年収約1130万円以上の世帯は最も多く、約50万円得します。(内閣府資料より作成)

 野田佳彦総理大臣の時に「社会保障と税の一体改革」が議論されました。超高齢社会を迎えて社会保障費が急増していく中で、安心して生活できる社会を作るために、消費税増税をお願いするというものでした。しかし、今回の幼児教育の無償化は、表面の表からわかる通り、高所得者へほとんど分配されるのです。このような使われ方のために増税する必要があるのでしょうか?
 昨年の待機児童数は約2万人でした。保育園に入れなかった家族は今回の無償化の恩恵は全く受けません。保育園に入れないうえに、金銭的にも消費税を取られるだけで、不公平感は増大するのではないでしょうか。また、無償化により更に待機児童が増える可能性が指摘されています。今回、認可外保育所や企業主導型保育所も無償化の対象となりますが、保育の質をしっかりと担保できるかどうかも指摘されています。
 一昨年9月に安倍首相が突然衆議院を解散しました。その解散理由は、北朝鮮のミサイル問題と、消費税増税分の使い方を変えるというものでした。幼児教育の無償化は、選挙対策と言わざるを得ないような状態で突如として出てきたものです。本法案は今国会での安倍政権の最重要法案でありますが、十分に練って出した案とは思えません。
 そもそも、自民党は子育て政策に力を入れて来ませんでした。その結果が外国人労働者の受入れです。保育所の待機児童問題も「保育園落ちた、日本死ね」というあのお母さんの悲痛な叫びを受け止めたのは、わが党の山尾しおり衆議院議員でした。子育て政策はわが党の1丁目1番地の政策です。
 先日、国会に保育園に落ちた若いお父さんとお母さんがいらっしゃいました。そして、「保育園に入れなかったので仕事が続けられない。なぜ、政治家は高所得者にお金を回し、本当に困っている人を助けてくれないのか?」との趣旨の話をされました。その通りではないでしょうか。

子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案の概要

1.幼稚園、保育所、認定こども園等
 ・ 3~5歳:幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育の利用料を無償化
 ・ 0~2歳:上記の施設を利用する住民税非課税世帯を対象として無償化
 ・ 保護者が直接負担している費用(通園送迎費、食材費、行事費など)は対象外
 ・ 低所得者世帯等の副食費の免除を継続し、免除対象者を年収360万円未満世帯まで拡充

2.幼稚園の預かり保育
 保育の必要性の認定を受けた場合、月額1.13万円までの範囲で無償化

3.認可外保育施設等
 ・ 3~5歳:月額3.7万円までの利用料を無償化
 ・ 0~2歳:月額4.2万円までの利用料を無償化

4.実施時期:2019年10月1日

2019年4月10日号「幼児教育の無償化はこれでいいの?」