■ 外国人労働者に関する入管法改正案が「強行採決」されました。十分な検討が行われていない状態で、外国から来る方々の人権は本当に守られるのでしょうか?

■ 私たちのライフラインである水に関する水道法改正案が「強行採決」されました。大手外資系企業に水道を任せてしまって本当に大丈夫でしょうか?

■ 私たちの食べ物である魚に関する漁業法改正案が「強行採決」されました。大手外資系企業に漁業を任せてしまって本当に大丈夫でしょうか?
 今国会も「強行採決」のオンパレード。国民に十分な説明をしない、このような強権政治を許していてよいのでしょうか。

【入管法改正案の強行採決】
 スイスの作家マックス・フリッシュは外国人労働者問題について「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」と語っています。今この教訓は生かされているでしょうか?外国から来る方々も私たちと同じ人間です。しっかりと受け入れ態勢を整えてから来てもらうべきです。
 しかし、安倍政権はまたしても真実を隠し、「うそ」を言ってこの法律を通してしまいました。
 今回の入管法改正案は、介護や建設業など人手不足の業種に限って外国人労働者を受け入れるものです。しかし昨年、日本に来ている約7000人の外国人技能実習生が失踪しました。失踪者は年々増えています。なぜ失踪するのか?失踪しないようにしなければ、業種限定する意味がなくなります。
 失踪者約2900人からの聴取票が存在することが明らかとなりました。この聴取票の開示を求めましたが、安倍政権は個人情報を理由に開示しませんでした。そのやり取りの中で、安倍政権は失踪理由の八十七%が「より高い賃金をもとめて」であると説明しました。しかし、これが「虚偽」であることが後に判明します。
 我々の粘り強い交渉の末に、聴取票は開示されました。しかし、その聴取票のコピーを取らせない、法務委員会の国会議員しか閲覧できない、という条件付きでした。これは野党いじめというレベルの話ではなく、まさに国民に対する隠ぺい行為でした。立憲民主党の山尾しおり衆議院議員をはじめ、数人の野党国会議員で聴取票を手書きで書き写す作業が始まりました。最後は各会派5人の国会議員まで閲覧できることになり、野党が結束して2900全ての聴取票を書き写しました(写真)。
 聴取票を書き写していく中で、安倍政権が虚偽の発言をしていることがわかってきました。「より高い賃金をもとめて」という項目は聴取票にはなく、「低賃金(契約賃金以下)」「低賃金(最低賃金以下)」など質問項目が細かく分かれていました。安倍政権は最低賃金以下で働かされていた外国人は二十二名、〇・八%であると説明しました。しかし実際には、約1900人、67%もの方々が最低賃金割れであったことが明らかになりました(上図)。安倍政権はこれらの事実を隠して、衆議院で強行採決を行いました。
 更に、参議院で強行採決される前日に新たな資料が出てきました。それは、我々が以前から求めていた資料で、技能実習生で死亡した方のリストです。平成27年から29年の3年間で六十九名の方がお亡くなりになっていました。そのほとんどが20代・30代の若者であり、10人は溺死、5人は自殺されています。日本に憧れてきた若者たちが、このようにして命を落としていたのです。これらの事実を隠し続け、やっと公表したら、その翌日に強行採決で法律を作ってしまう、このようなやり方を許してよいのでしょうか。
 日本に来る外国の方々も私たちと同じ人間です。人権を守り、命を大切にする、尊厳ある日本であるべきではないでしょうか。外国から来る方々が、日本に来てよかった、日本は素晴らしい国だと思ってもらえるように、しっかりと労働環境を整える必要があります。
 そもそも、少子化のために人手不足になるのは以前から予想できていました。そのための子育て支援をしっかりとしてこなかったことが根本の原因ではないでしょうか。また、例えば介護の分野で、給与が低すぎて家族を持てないという叫びは、今に始まったことではありません。農業の分野もそうですが、しっかりと生活が成り立つようにしなければ、働き手は集まりません。その環境を変えることなく、外国人をあてがえば良いという考え方は間違っています。社会の根底を支える場所で働く人が、しっかりと生活できる仕組みを作っていく必要があります。

2018年12月15日号「入管法・水道法・漁業法の改正」